本当に大切なことは誰にも教えたくない

10年ほど前からメンタルを傷つけて病んで悩んで、自分なりに導き出した結論。たまに日常。

『愛』ほど言葉にして薄っぺらくて安っぽいものはない

 1421文字・ちょい長い。

肉体の学校 (ちくま文庫)

肉体の学校 (ちくま文庫)

 

 三島由紀夫『肉体の学校』を読み終えた。

以下あらすじ。 

 裕福で自由な生活を謳歌している三人の離婚成金。映画や服飾の批評家、レストランのオーナー、ブティックの経営者と、それぞれ仕事もこなしつつ、月に一回の例会“年増園”の話題はもっぱら男の品定め。そのうち一人元貴族の妙子がニヒルで美形のゲイ・ボーイに心底惚れこんだ…。三島由紀夫の女性観、恋愛観そして恋のかけひきとは? 

出典:筑摩書房 肉体の学校 / 三島 由紀夫 著

ただ美しいだけのふたり

 主人公の妙子は四十前にして、内面的にも外見的にも、女性としての魅力を全て持ち合わせていて、しかもそれを自覚している最高の女性だった。ただ、恋するときだけはどうしても心が若くなって、自らの虚栄心が相手の本当の姿を見せないようにしてしまう。 でも、妙子の最後の一言に、本当に綺麗な人だなと思わされた。

 千吉は若くして人と社会の暗黒面を良く知り、若くて力の無い男が情熱を捨てずにのし上がる手段を身に付けていた。もちろん、その若さで本当に人を愛すること、愛の上手な使い方さえ知っていた。ただ、最後の最後は、妙子の方が圧倒的に多く、男を扱う術を知っていたんだ。本物には虚勢は通用しない。全てを失った後、今度は無様に格好悪くのし上がる決意が出来なければ、きっとこの先はない。

 途中までの千吉はとにかく男前で、男性的な魅力に溢れていて、貧弱な俺とは正反対な人物に見えていたけど、彼の生き方は少しだけ俺に似ていた。汚れることを怖れないで、浅はかな虚勢を張って上手に生きている様に見せる所とかね。

 

この本を手に取った経緯

 物語の構図としてはもっとドロドロしていて良いのに、登場人物のお陰でとにかくお洒落で、優雅で、高貴に見えてしまうから、この一冊だけで三島由紀夫という作家の力を思い知った。俺は三島由紀夫という人物を良く研究したわけでもないし、作家としてどういう構図が好きなのかも良く知らない。

 そんな状態で今回俺がこの作者の、この作品を手にした理由は、

 

愛を知りたかったから。

 

 俺は予てより『愛』ほど言葉にして薄っぺらくて安っぽいものはないと思ってきた。それが最近突然変異的に自分の心の変化を感じて、それが愛なのかも知れないと思ったから、愛を描く作品を探し求め、偶然出会っただけだ。

 しかし、俺が何故愛を軽んじてきたのか、今回『肉体の学校』を読んで少しわかったかも知れない。妙子と千吉の愛は決して五十年前も今も、美しく扱われるものではない。

 それでいい。

だって俺の心にしっくりくる純粋な愛とは、決して今までの世間が描く様な綺麗なものではなく、濁ってて、気泡だらけで、透かして見ても景色がボヤけるだけの歪なガラス玉みたいなものだと分かったからだ。

 きっと真実と事実と幻影と、全ての区別が付かなくなるような、そのくらいの透明度。

 その愛とやらが自分の中で何となく見えて、今まで安っぽいと感じてきた感覚としっくり来ただけでも、この本を手に取って良かったなと思える。だから俺みたいに自分が抱く愛の形が不明瞭な人にはオススメの作品なのかなと思う。

 まあ、綺麗な恋愛が好きな人には合わないかも知れないけどね。

 

おわりに

 妙子には三島由紀夫でさえ一生敵わない。