本当に大切なことは誰にも教えたくない

10年ほど前からメンタルを傷つけて病んで悩んで、自分なりに導き出した結論。たまに日常。

乙一『GOTH』 感想

 友人に勧められて読んだ作品。 

 さっそく以下に内容の一片を。

 ぼくは、死体が見てみたい…

森野が拾ってきたのは、連続殺人鬼の日記だった。学校の図書館で僕らは、次の土曜日の午後、まだ発見されていない被害者の死体を見物にいくことを決めた……。

 作者の作品はいくつか読んでいて、漂う不気味な雰囲気とか、人物描写とかが好きだなという印象は持っていた。

 そこで今回勧められたGOTH、久々に胸を躍らせて読んでみた。以下に感想を記すが、詳しいレビューを書いている人は他に沢山いるので、あまり物語の中身には触れないで、登場人物二人の関係に着目してお話しようかと思う。ただし、最後の方に重大なネタバレがあるので、これから読む意思がある方はさよならした方がいい。

 

感想

 率直に面白かった。

 相変わらず不気味な雰囲気を醸し出すのが上手な人だし、狂った人間の書き方を熟知していらっしゃる。あと、そうだったら絶対面白いだろうけど、まさかそんな展開にはならないだろうなあ……みたいなポジティブな期待に応えてくれる凄さが心地よかった。

 俺がGOTHを読もうと思ったのは、友人に勧められたことはもちろんとして、勧められた際に言われた、

「森野と"僕"の関係が俺と幼馴染の関係に似ている」

という旨の言葉がとても印象的だったからだ。これは読まずにはいられない。

 読んだ結果、確かに二人の関係性は俺と幼馴染の関係性に似ているように思えた。己の歪みを自覚し、同じように歪みを持った人間に惹かれる点。森野が世間の反応なんて全く気にしない奔放さを持っていて、"僕"が割と世間の常識を知っているフリができる所とかも似ているように思えた。

 ただ一つ決定的に異なる点を挙げるとすれば、それは表情の使い方だ。俺ら二人は対話する際、何を言われても余裕に見せる薄い笑みを絶やさない。いつからそうなったのか覚えていないけど、会話の中で人間的な感情が表に出たら負けで、一度の会話のなかで相手に何回感情を決壊させられるかの勝負を暗黙の内に繰り広げていた。

 例えば幼馴染が俺に嘘か本当か判断つかないテンションで「愛してる」などと言い放ち、俺が照れたり笑ってしまったら俺の負け。俺が何か気障な返しをして幼馴染が照れたりしたら俺の勝ち。周囲の人間には何が面白いのか理解に苦しむ遊びだと思うが、普通の人間が示すような感情表現など出来ない狂った存在なのだという痛々しい意識を持つ俺ら二人にとって、ベタな台詞に対してベタな感情表現をしてしまうのはとても恥ずかしい事だった。でも逆に言えばこの遊びは、本当の感情を表情として浮き彫りに出来るのは、お互いが唯一の存在であることを意味している悲しい背景に裏打ちされたものだ。

 この作品を読み終えた今、最近のメンタルグラグラな自分と比べて、薄ら笑いを浮かべて遊んでいた頃の自分がいかに強かったかがよく分かる。強さの基礎を思い出すきっかけをくれた神山樹くんと森野夕さんに心から感謝してる。

 

 そして読書熱を再燃させてくれた良作に出会えたことを大変嬉しく思う。

 

GOTH―リストカット事件

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