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本当に大切なことは誰にも教えたくない

10年ほど前からメンタルを傷つけて病んで悩んで、自分なりに導き出した結論。たまに日常。

幼馴染との話①-2

昔話 こころ 幼馴染
    初対面から2日後。
    その日はレッスンを終えると、寄り道せずに真っ直ぐ駅へ向かっていた。すると背後で

「てつくん!」

なんか数日前に聞いた気がする声が誰かを呼んでいた。

「てつくん‼︎」

おい『てつくん』、女の子が呼んでるよ。早く返事してあげなよ。
「てめえ無視してんじゃねぇよ! とっとと来やがれアホ!」
ほら怒られた、とっとと返事すれば良かったのに、とかのんきに思ってたら何か鋭利な物が俺の頭に直撃した。
    頭の痛さはあんまり無かったけど、生命の危機を感じてとっさに振り返った。
    
    完全に手刀だった。
 
一昨日会ったばかりでまだ名前も知らないその少女は、手で作った刀をゆっくり下ろしながら完全に作られた満面の笑みで言う。
「一緒に帰ろうぜ」
『てつくん』って俺のことかよ。いや『てつくん』って呼ばれたことなかったから分かんなかったの。しかし一回しか喋ったことない人に手刀食らわすか? 今思うととんでもねえ奴なんだけど、当時の俺は本当に温くて、何事も無かったかのように快諾していた。
「その前にちょっとだけ本屋寄らせて」
当然これも快諾。俺も本好きだしね。
    そんなわけで俺たちは英会話教室のすぐ隣にあった割とデカめな本屋へと向かった。その道で何か話してたはずなんだけど、残念ながら細かいことは忘れちった。
    で、やって来たのが確か宇宙に関する本のコーナーで、女の子はすぐ星の図鑑を手に取った。俺も星に興味あったから横から覗く。
「星にはちゃんと名前があるからさ、名前で呼んであげなきゃだめだ。てつくんだって周りの人に名前じゃなくて『あの人』とか『君』とか呼ばれたら寂しいだろ?」
本に視線を巡らせながら言う。今思うと少し物悲しげだったかも知れない。
「たぶん……そうかも」
「うん、だからわたしは全部知りたい」
よっぽど星が好きなんだなー。
その時は単純にそう思った。彼女のスケールをまだ知らなかったんだ。

『全部』

星の名前の話かと思ってたけど、仲良くなるにつれ、この人はこの世にある物と現象、その原因に至るまでの全てを知ろうとしていたことが判明していく。まだ小学生だよ? そんなちびっ子が明確なヴィジョンを持って全てを知ろうとしているだなんて、未だに信じられんね。

    俺は全部知ろうとは思ってなかったけど、一つだけ知りたいことがあった。
「じゃあさ、そろそろ名前教えてよ」
言った瞬間やっと本から目を離して、今まで見てきた中では一番朗らかな顔を俺に向けた。
「○○○○、だからYでいいよ」
ここにきってやっと名前が判明したよ。
確か由来は世界を照らす最後の光。後に名付けた本人であるYの父親に直接聞いた。
「よろしく」
「ああ、よろしく」
Yは左の口角を上げてニシシと笑った。

    それから本当に色んなことがあった。二人とも世間との付き合いが下手で心を病んだ。Yが先に病んで、その少し後に俺が病んだ。Yの中学受験で少しの間離れ離れになった。奇跡的な再会を果たした。時間の経過と共にYの言葉遣いは柔らかくなった。逆に俺は少し尖った。

    今の状況を打開する核心的な答えが2人の思い出の中にあるような気がする。だから思い出していくね。
少しずつ、ゆっくりと。