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本当に大切なことは誰にも教えたくない

10年ほど前からメンタルを傷つけて病んで悩んで、自分なりに導き出した結論。たまに日常。

幼馴染との話①

昔話 幼馴染
    初めて出会ったのは小学生の頃。俺にしては珍しく親父が勧めるのを素直に聞いて、週2日水曜日と金曜日だけ、英会話教室に通い始めた間もない頃だった。俺が入ってから数年後には英会話というものが爆発的に流行していくのだが、当時はまだそこまで流行ってはおらず、俺と同じくらいの年の子はそう見かけず、ちっとだけ寂しさを感じていた気がする。
    そんなある日、いつもの様にレッスン開始時刻より10分程度早めに来て、机と椅子だけ置いた簡易的な休憩場に向かった時、出会った。
    机を跨いで逆側に、恐らく俺と近い年であろう女の子が一人、とある文庫本を開いて座っていた。文字を追う瞳は、片方が青味がかった銀、片方が翠緑。髪の毛は栗色で、恐らく天然の、ゆるいパーマが掛かっていた。容貌のインパクトもさることながら、読んでいる本のタイトルにも中々の威力があった。
なるほど小学生ならみんな読んでるよね、とは思わんかった。異常な違和感を感じた所為か、
「なに見てやがる」
この言葉を聞くまでその子をじっと見ていたことに気付かなかった。女の子は俺の視線にぶつけるように強烈な視線を送っていた。    
    15年近く経った今でもあの目は忘れない。返した言葉は確か、「いや、難しい本読んでるなと思って。ごめんなさい」
こんな感じだったかな。もはや明確には覚えていない。でも当時の俺は、今の俺と違ってすぐ謝罪が出来る良い子だったのは覚えてるから、大体あってる。
「この本が何のこと書いてあるのか分かるの?」
「ちゃんとは知らないけど、すごく難しいことは知ってる」
「ふーん」
「……」
女の子は再び視線を活字の海に戻した。そして数分後のチャイムをきっかけに自身の教室に向かっていった。
    あまりに衝撃的な事柄が多すぎて、その日のレッスンはあまり頭に入らんかった。ジェイソンごめんね。
    そしてその日、その子とはレッスン終了後にロビーでも顔を合わせることになる。俺が次回のレッスンの予約をするために会員カードを手に受付に立っていると、まだ名前も知らない例の子が後ろからカードに記された名前を確認して、
「名前は○○○○か。よし、覚えた。じゃあ、またな」
それだけ残してとっとこ先に帰ってしまった。嵐みたいだった。
    確か最初の出会いがこんなもん。